天文書13

天文書13 「月のかぐや」

編著者名 JAXA(宇宙航空研究開発機構)
     執筆者  渡部潤一
書 名 月のかぐや
発行所 新潮社
発行年 2009年 11月5日
価 格 1,300円
大きさ A5

なお、使用されている画像の多くは下記のURLをご覧ください。
http://jda.jaxa.jp/category_p.php?lang=j&page=&category1=352&category2=&page_pics=100

概要
 本書の黄色の帯には「こんな月、見たことない!」と書いてあります。

 本書は2009年6月11日3時25分10秒に月へ落下して運用を終えた、月周回衛星「かぐや」に搭載された各種カメラが撮影した、月の写真集です。小口径から大口径まで、それぞれの望遠鏡・双眼鏡で観望出来る天体である月。その月を、落下前は10㎞-30㎞の低空から撮影していた「かぐや」の画像は、これまでに紹介されていた画像を上回る情報を与えてくれます。また、望遠鏡で月を見るときに、さらに興味を持って観望するきっかけを与えてくれそうです。

 月周回衛星を計画し運用する経過も大変に興味深い。「はやぶさ」が小惑星イトカワのサンプルを持ち帰ったことは記憶に新しく、そのドラマチックな経過が多くの人たちに感動を与えてくれたが、この「かぐや」も多くの「想定外」を想定して多くの困難を乗り越えています。

 巻末近くに、このプロジェクトに関わった人達の文章が掲載されています。
 その中で「100回の不具合対策会議」という見出しが有り、その横に小さな文字で「プロジェクトはスタートしたものの、関係者は総勢600人。『想定外』を想定しての、とりまとめる努力が続いた。」という文が載せられています。本書の発行は2009年11月ですが、今回の原発事故で乱発された「想定外」という言葉は一体何なのかを考えさせられます。

構成
 Ⅰ 月の名勝地をめぐる 
    ムーントラベラー
      ティコ
      月の地形(表裏全景)
      ハドレー峡谷
      ジョルダーノ・ブルーノ
      クレーター三昧
       リンネ  オイラー  キムラ  8の字クレーター
     チェーンクレーター  二重リングクレーター
    星から石の世界へ
      アポロ計画
      新しい溶岩
      古い溶岩
      海に浮かぶ地形
        アルキメデス
        アルプス谷
        ピコ山
        リンクルリッジ
        晴れの海
        アルフォンサス
        ライナーガンマ
        マリウスヒル
        直線壁
        ラボアジェ
        アリスティルス
    月の2面性
      重力分布図(表裏)
      人類未踏の秘境、裏側へ
        ツィオルコフスキー
        東の海
      月のエベレストとマリアナ海溝
        コロリョフベースン
        アントニアディ
      裏の顔
        バーコフ
        ヤマモト
        コロリョフ
        メンデレーエフ
        ジャクソン
        ニシナ
      極地域
        南極エイトケン盆地
        シャクルトン
    人類初の視点
    ハイビジョンの美

 Ⅱ かぐやプロジェクト
    プロジェクト始動
    100回の不具合対策会議
    あのころのかぐや

 Ⅲ かぐやの科学的発見
    月の進化の解明はすぐそこ
    月、そのユニークな素顔 他

 Ⅳ さようなら、かぐや
    これからの月探査
    太陽系の中の月
    月の乗り物

 時間で1秒以内、距離で2㎞以内と言う最後のミッションを実行しながら、月周回衛星「かぐや」は月の影の中に消えていきました。
 「かぐやプロジェクト」を推進した人々の知恵と意志とエネルギーが本書から伝わってきます。
 それにしても、本書に掲載されている月の画像は、月面を観望するときの想像力をかきたてる力が有ります。この本の画像を想像しながらの月面観望は、更に楽しくなりそうです。
 この本、1冊お手元にいかがですか。

powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional